食品安全工学科
実録レポート
あたりまえの日常食の力で
健康の常識を塗り替えたい。
食品安全工学科
本田 涼将
和歌山県出身
どんなことに取り組んでる?
食品免疫学研究室に所属し、人間に有用な成分を生み出す乳酸菌を見つける研究を行っています。いま注目しているのは「ポリアミン」という成分。寿命伸長や病気の炎症抑制など、ヒトの健康に役立つさまざまな効果があることがわかっており、私はこのポリアミンを人工的に効率よく作り出したり抽出したりする方法を解明しようとしています。そうすれば健康食品やサプリに応用して、人々に研究成果を還元できるのです。大きな夢を描いていますが、研究時間の多くは乳酸菌の培養に費やしており、ひたすらピペットと培養プレートに向き合い続ける日々。正確なデータをとれるように意識して丁寧に取り組んでいます。
自分なりのアプローチは?
データの正確さについて意識が高まったのは、3年次に日本乳酸菌学会で登壇したのがきっかけ。そのとき私は、発酵食品内に生息する数ある乳酸菌の中から、どれがポリアミンを産生する乳酸菌なのか、そしてポリアミンの産生にはどんな物質が必要なのかを解明し、その成果を発表しました。大勢の専門家が集まる場では、発表後は厳しい質問を受けることもありますし、中途半端な実験や計測データでは相手にされません。そんなプレッシャーを体感して以来、「誰よりもミスなく正確なデータをとれるように」、「実験中の些細な変化や違和感にも気づいて原因をよく調べ、新たな知識にできるように」と研究への姿勢が変わりました。
興味のきっかけは?
入学以前は、ニュースで見た食品への異物混入事件から、食の「安全」に強い関心を持っており、大学でもこのテーマを研究したいと考えていました。しかし研究室配属後の実験で、石川県の発酵食品「かぶらずし」から分離された乳酸菌がポリアミンを産生することを発見。数百数千とある乳酸菌の中でも、ポリアミンを作る能力のある乳酸菌はほんの数%という珍しさに加え、その成分がヒトの健康に効果的とわかったため、俄然興味がわきました。以来、乳酸菌とポリアミンについて論文を読んでは知識を蓄えています。ポリアミンが大豆製品にも多く含まれると知ってからは意識的にとうふ入りの味噌汁を食べ、日常生活でも追いかけています(笑)。
今後の目標は?
最近の実験では、乳酸菌が細胞「内」で産生したポリアミンを、細胞「外」に放出していることを発見しました。となると次の謎は「どんな仕組みでポリアミンが細胞外に運ばれているのか」。これを解明できれば、ポリアミンを発酵によって大量に生産できるかもしれません。また、今回発見した乳酸菌を用いたポリアミンを高濃度で含んだ新しい機能性飲料の開発も考えています。このような技術の応用が現実になるのはまだ先の話になりそうですが、私は残り少ない研究期間で、ポリアミン活用の足がかりになる発見を一つでも多くできるように、これまで以上に正確な実験に繰り返し取り組んでいきます。
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