生物工学科
実録レポート
失敗さえも、また別の生命の
不思議に出合うきっかけ。
生物工学科
武部 夏実
和歌山県出身
興味のきっかけは?
高校のとき遺伝子組換え植物についての授業を受け、「この分野にはすごい可能性がある」と感じました。そのとき私が知ったのは「害虫に強い植物」でしたが、この手法を用いていろんな特性を持つ作物を作ることができれば世界の深刻な食糧難も解決できるかもしれない。そんな期待がふくらみ、可能性を追及するために生物工学科への進学を決めました。祖父母と両親が農業をしており、農作物を栽培する大変さを身近で知っていたことも遺伝子組換えに興味を持った理由の一つです。現在は植物の機能について応用的な研究を行う「生物機能物質工学研究室」に所属し、同学科内の「細胞工学研究室」との共同研究に取り組んでいます。
どんなことに取り組んでいる?
私がいま向き合っているのは、「ゼニゴケの精子誘引物質の同定」というテーマです。生物の受精の仕組みはまだわからないことが多く、精子誘引物質が同定できている種は決して多くありません。私はゼニゴケの受精の仕組みを解明するため、精子誘引物質ではないかと考えられる物質を生成しない個体を遺伝子組換えによって人為的に創り出し、この個体を分析することで何が受精に必要な物質なのかを突き止めようとしています。それにしてもコケの研究とは、地味ですよね(笑)。私も最初は驚きました。でもゼニゴケの遺伝子は意外に人の遺伝子と構成が近いんです。この研究で発見したことが、いつか人の不妊治療に生かされる日が来るかもしれません。
面白いのはどんなこと?
遺伝子組換えの研究が興味深いのは、何ができるかわからない驚きがあるところです。私たちはノーベル賞を受賞された「クリスパー・キャス9」という最新のゲノム編集技術を使って意図した特性の個体を創り出そうとしていますが、先行研究のない分野のことですから、試行錯誤しているうちに予想もつかない個体ができることがあります。わかりやすいよう例えていうなら、「葉っぱのない株」のようなものが突然生まれるんです。そういうときは失敗の落胆ではなく、新しい研究のタネを見つけた喜びを感じます。学科の専門科目「バイオインフォマティクス」「生物分析化学」「細胞工学」などで学んだ知識を総動員してテーマの解明に取り組んでいます。
今後の目標は?
4月からは大学院に進学して、現在のテーマとさらに格闘していく予定です。大学生になったばかりの頃は、まさか自分が大学院に進むなんて想像もできませんでしたが、ここで取り組んできた研究がものすごく面白かったため、3年次の後期には「大学院で続けよう」という気持ちが固まりました。とはいえ、いま現在、私のチームは絶賛大迷走中です(笑)。計画通りの結果がまったく出ないため、どこから仮説が間違っていたのかを一つひとつ点検して、もう一度再チャレンジしようとしているところです。でもこういう迷路のような状況をなんとか進んでいくのも醍醐味。あの手、この手を考えて、ひとつの成果を導き出していきたいと思います。
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