生命情報工学科
実録レポート
自動車事故のない未来はくるのか。
研究の先に答えがあるはず。
生命情報工学科
本間 友也
大阪府出身
どんなことに取り組んでる?
私は人が無意識に行っている視知覚のメカニズムを明らかにし、コンピュータ上で再現する研究に取り組んでいます。メインテーマは、自動車を運転中のドライバーの視線をシミュレーションするシステムの開発です。現在、自動車業界ではより安全で快適な運転のために、数々の革新的な改善が検討されています。そうした新しい機能の開発過程においてメーカーは、ドライバーが陥る可能性のあるあらゆる場面を想定しなければなりませんが、実際の人で検証できないこともあります。そんなとき、このシミュレーションシステムを用いて、どのような状況で人は何をどう認識するのかを確かめることで、よりスムーズな開発が可能になるはずです。
その研究のユニークさは?
人は目に映るものをまんべんなく認識するのではなく、大きさや色のコントラストなどの特長に応じて優先順位をつけて認識しています。また、対象物の動きや天候などの周辺の状況など、さまざまな変動要因が視覚情報処理に影響します。私の研究では、それらの認識の仕組みを数式モデル化し、特定の状況を再現した運転場面において、よく見られている/見落とされている箇所を色や濃度で区別して表示するシステムの構築を目指しています。ドライバーの注視ポイント、見落としポイントがわかれば、車内の速度計やナビといった情報表示の改善に役立てることはもちろん、道路標識や信号の配置の工夫など交通事故を未然に防ぐ道路環境づくりにも貢献できます。
研究の上で努力していることは?
運転技術の革新に活かされる研究だけに、モチベーションは上がります。ただ研究で取り扱う分野は幅広く、人の視知覚に関する知識に加え、さらにそれを数値データ化し、シミュレーションするためのプログラミング技術まで修得しなければいけない点は大変ですね。視知覚領域の最新の知識は、視覚や脳の構造に関する英語の論文を中心に入手していますので、まず英語力が必至です。またプログラミングの際には、ただ動作するだけのものを作るのでなく、研究室のメンバーが自分のデータを確認したときに一目で理解できるように可読性を意識したり、システムの処理速度を上げるために端的なコードになるよう工夫したり…。どれだけ時間があっても足りないと感じています。
今後の目標は?
自分なりに努力しながらシステムの改良を進めていますが、現状、シミュレータの正確性はまだまだです。より高精度で実用性の高いシステムを追究していきたいと思っています。また現行システムでは、10秒分のシミュレート結果を表示するのに3時間もかかってしまい、自動車メーカーの開発者に使ってもらうにはほど遠い状況です。研究の実用化には、結果の精度を担保しつつ、処理速度を何倍も上げるという両軸の改善が求められます。ハードルは高いですが、それを乗り越えることができれば、実際の自動車や道路の開発に研究成果が活かされ、いつの日か、交通事故のない世界が実現できるかもしれません。今後は、大学院に進学して、より精力的に研究を進めていきたいと考えています。
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