人間生活の質の向上を目指した
ユニバーサルデザイン(UD)とモノづくりに貢献する

人間環境デザイン工学科は、人々が生活する上で必要なモノを設計したり設計するための便利な方法を開発したりする技術を教育・研究する学科です。

人間環境デザイン工学科が取り上げる「環境」とは、自然環境ではなく社会環境を指します。人々が行う生産から消費に至る生活に関係するモノ造りを、生産者・ユーザーといった人間が持つ各種の特性に合わせて設計する能力の養成をめざします。

私たちがめざす「人間環境デザイン工学」は、設計した機能を有するモノがその周囲の別のモノとどのように関係しあって機能するのかを予測し、その予測を設計に組み込んでトータル設計する技術の開発です。



旧学科名・人間工学科と人間環境デザイン工学科の違い

人間環境デザイン工学科は、一歩進んだUD設計の方法を開発する学科です

旧学科名・人間工学科では、人間生活の快適性や健康を向上させるモノから医療・福祉に関連する生活支援のためのモノまで、人間生活の質(Quality of Life)の向上を目的とした生活・福祉に関連したモノの開発・設計・製造に貢献できる研究者・技術者の養成を目標としてきました。

人間環境デザイン工学科では、人間工学科が掲げた教育研究目的に加えて、次の様な特徴を追加した、現代社会の要請にマッチした教育研究方針を掲げる学科です。

現在の機械設計は、設備・機械・用具の具体的な形状を発想して、図面に記して実体の造形へとつなげることを主眼としています。しかし、モノは、具現化した後に各種の特性を持った人(身体が大きい・小さい人、妊婦、右利き・左利きの人、小児と高齢者など)がその生活空間で運動させたり移動させたり、固定されたモノに人が接近したりするなどして使用・活用して、初めて機能・効果を発揮します。

私たちは、人の機能と空間の特性を考慮せず、求められる機能だけをモノに与えても、真に使いやすいモノにはならないと考えています。

人間環境デザイン工学科がめざす教育研究は、新しいUDの方法を生み出し、活用し、社会に役立てることです。

すなわち、設計したUD用品を様々な身体的特性を有する人々が、各々の生活空間で使いやすく利用・活用できるかをあらかじめシミュレーションした上で設計を完了できる能力とそのためのシステム開発です。

人間環境デザイン工学科では現在、実空間としてキッチン、風呂、洗面台・トイレ等を設置したUDルームを実験室内に構築しています。この実空間で、例えば車椅子を使用している人が実際に洗面台や自動販売機に接近して日常生活動作をするとしましょう。この動作を位置検出システムで捉えて、首、腰等の大関節や手指関節の屈曲角や位置移動を検出します。検出した数値データをコンピュータ上で人の形をしたキャラクター(デジタルマネキン)に転送すれば、まるでポケモンGOのように、コンピュータ画面には、実空間の画像に実際の人の動きをリアルに再現したデジタルマネキンが現れて、動作を再現します。

すると、UD用品を使用するとき、実空間で障害となる要因の特定やその位置において手が届く範囲を容易に決定できるなど、UD用品の形状設計や改良設計だけでなくUD用品が使われる空間における機能性や壁・据え付け家具等との位置的干渉を即座に判断・考察できるようになります。

この他にも

カラーUDの技術開発:モノの機能だけを追究するなら、モノの色はそれ程重要ではないかも知れません。しかし、我々は機能よりカラーやデザイン性を重視してモノを購入することが少なくありません。だから、カラーUDや感性工学の考え方は欠かせない設計技術のひとつです。

温度UDの技術開発:特に冬場の風呂場・トイレや廊下はリビング等の部屋よりも温度が低く、部屋間の温度差が大きくなりやすいところです。急激な温度変化は、身体に病的異常(ヒートショック)を誘発しますので、各部屋の温度を検知して、極端な低温部をなくす必要があります。だから、温度UD(温度バリアフリー)の考え方は欠かせない設計技術のひとつです。

アンビエントインテリジェンスをUDに導入する:例えば、温度や湿度のセンサーは、使用する人々の状態よりもむしろ人々が暮らす生活環境を捉えるセンサーといえます。このデータを分析すると、ある生活環境で暮らす人々やモノの状況を検知・推定することができます。推定できると、その人々が欲していることを提供したり、これから起こりそうな危険な事態を事前に予測して対処したりすることができます。このことをアンビエントインテリジェンスと呼びます。アンビエントインテリジェンスとUD技術の融合は、そこに暮らす人々に対するサービス全般の質を向上することを可能とする新しいタイプの超ジャンルUD技術となるはずです。この技術開発を推進しようとしているのが、私たち人間環境デザイン工学科の学生・大学院生そして教員なのです。

人間環境デザイン工学科では、このように、人が使う用品だけをUD設計する技術を教育研究するだけではなく、そのUD用品が周囲の別の機器・UD用品とどのように関係して使われるのか、あらかじめ考えてよりよいUD用品を企画したり開発したりする能力を教育して、次の社会に貢献できる高度なUDスキルを獲得した研究者・技術者の輩出をめざしています。